妥当性に乏しいと考える代替療法を利用せずに済んでいるワケ(中編)

前回からの続きです。前後編の予定でしたが、思いのほか長くなってしまいましたので、今回を中編とし、次回を後編の3部構成に変更したいと思います。
今回はマクロビ園に入ってからの代替療法が接近してきた状況を書いてみます。最後に、利用する利用しないの分かれ道は何だったのだろう?という事について考えてみました。

■単なる自然派じゃなかった
私はもともと息子には小さい頃は野山を駆け回って遊んで欲しいなぁ。教材を使用するような学習的なものは後でイヤという程ついてまわるのだから、この時期ぐらいは遊んで遊んで遊びまくってもらいたいと思っていました。なので、保護者に発表する事が目的のような行事が殆ど無く、テレビやビデオなども見せない一日中体をつかった遊びを提供するこの保育園の方針はとても良いモノに思えました。
前回も書きましたが、言語による指示が通りにくい息子にはそのような環境が望ましいと思っていたからです。
はじめの頃は泣いてばかりで過ごしたり、通園拒否などもありましたけど、徐々に馴染み、一応は遊びに参加する事が出来るようになってきたようです。しばらくすると家に帰ってくる時には真っ黒になっていて、よく遊べて居る事がわかりました。
新しい保育園はあっているかもね、合わなかったらどうしようという悩みもなくなり一安心、と思ったのも束の間、保育園の変なところが段々と見えてきたのですね。
▼▼▼余談▼▼▼
これは自分の持つイメージや解釈なのですが、子どもって一度に沢山の情報が流れてくるような場所の中に放り込まれたような状況にあると思うのですよね。その中で自分に必要であったり、わかるような部分を見つけ出してどんどん取り込んで成長する・・・そんな風に見えるんですね。濁流じゃ無理だけど、ある程度環境が整っていれば居場所を見つけて自律的に情報を飲み込んで自分なりの解釈を付け加えていく・・・。そして、ある一定の蓄積がなされると、今まで単独で動いていた歯車が突然噛み合って、今まで出来なかった事が突如として出来るようになる、そんなイメージ。
ウチの息子は流れてくる情報の多くを意味のあるものと認識できないのかな、なんて想像しています。そして一度に処理しきれない意味を持たない情報が流れてきたらパニックになってしまう、かその場から離れて自分の安心できる場所に留まろうとするでしょう。だから、情報を仕分けて分かりやすいものを少しずつ流してあげれば良いのでしょうか。うん、良いとは思うのですが、果たしてソレに興味を持ってくれるのでしょうか。本人が興味を持たないものや、興味が続かないものでは途中で投げ出し兼ねません。形になる前に終わってしまうでしょう。
本人が楽しめる事に参加してもらうことにより、継続して情報を採り入れる事が可能になると思ったのです。その中に有用な情報は少ないかも知れませんが、例えば、効率よい一度で10の情報量を獲得できる療育があったとして、それが数回しか続かない場合と、一度の情報量は0〜3ぐらいで少なく、確実じゃあないけれど毎日継続できる活動参加を比べてみたらどうでしょう。
厭くまで私個人の考えなのだけど、そんな風に思ったのです。
▲▲▲余談終わり▲▲▲

■トンデモの行列
保育園のトンデモ具合については過去記事参照なのですが、一応まとめると・・・
その1:給食メニューにビックリ
見事な玄米菜食で、小魚すら滅多に出てこない。おやつはおにぎりやお餅という徹底ぶりで、生の果物も使わない。ゆるふわマクロビって何状態。
その2:医者にかかる必要なし
予防接種は有害、薬は不要、じゃあどうする?お手当法で解決だ!
その3:自然が一番
自然が一番、昔の生活が一番、テレビや電子レンジは危険な電磁波を発生するから望ましくない。
よーするに、園長は真弓定夫監修マンガに書いてあることを全て正しいと理解していらっしゃるのです。

■押し寄せるトンデモ
このブログを以前からご覧になっている方にはマクロビ保育園と距離を置き上手につき合っているように見えるかも知れませんが、実のところとても苦しんでいたりするのです。その苦労などをボロボロと書いてみますね。
意外(?)かも知れませんが、給食が厳格なマクロビ食である事は何ともないのです(それを計算の上、家庭で不足しがちな食材を多めに提供しているから)が、家庭で食べさせる物にまで文句をつけてくるのが堪りません。例えば、「今日○○君は落ち着きが無かったのですが何か変わったものを食べさせました?お肉を食べたりすると興奮しやすくなったりするのでそうかな、と思ったのです」みたいな話を振ってきます。砂糖、牛乳、スナック菓子は目の敵です。私は面従腹背を貫いておりますが、平気な顔で答えているけど実は結構辛いのですよね。何が砂糖の採りすぎだ!陽性食品を与えすぎだ!食べ物を犯人扱いするよりも大切なことはあるだろう?
また、こんな事もありました。妻が迎えに行くと、熱を出したみたいで横になっているとのこと。アタマにはキャベツがグルグル巻きにされていたそうです(こうなるっ!)。あちゃ〜、ですけどまぁ、これは100歩譲って許容しましょう。その後のある日息子のウデにキャベツが巻かれておりました。それは何故かと尋ねると、友達に噛まれたのだそうです。動物などに噛まれた場合には傷の程度の割に化膿したり治癒が長引いたりするのはよく知られております(キーワード動物咬傷)。この場合、医者に診せるとか、傷口の洗浄などの適切な処置が求められるのですが、ろくに洗浄もせずにキャベツで覆ってしまうというのはあまりにヒドイ対処法です。今後、ウチの息子にはキャベツ湿布を行わないよう伝えましたが、園長の顔は『この親は分かっていないなぁ〜』
みたいな表情が浮かんでおりました。これも大きな心の負担です。
このほか、梅醤番茶だ、排毒だやれなんだとトンデモが飛び交っております。

■浸食するトンデモ
保育園からの圧力は苦しみながらも跳ね返す事が出来ておりました。しかし、敵(?)は保育園だけではありませんでした。息子の同級生の保護者が最大の難所でした。
私自身は非コミュで愛想が悪いので他の保護者さん達とは通り一遍のあいさつで終わってしまうのですが、妻は表面上愛想がよく、子どもっぽい外見をしているのでちょっかいをだされます。あの子は面倒を見てあげないと・・・というキモチになるのかもしません。なので、色々なトンデモの餌食になりそうになります。
はじめにやってきたのは所謂マルチ商法さんでした。
ある時お風呂に入ると、見慣れないシャンプーが置いてありました。これはなぁに、と私が聞くと、「このシャンプーはとても肌に良くて、洗い上がりがすごいんダヨ」とのことでした。しばらくすると、同じロゴがついた家庭用品が幾つか増えておりました。妻から話を聞き出すと、どうやら保育園の同級生のお母さんから紹介されたのだとか。そして、経皮毒云々・・・。
経皮毒?何ソレ』怪しさ抜群ですね。しかも購入方法が個人からという時点でピンと来ました。これは所謂マルチ商法ですね。妻にはマルチ商法がどのようなものかを説明し、もう購入しないように話しました。それでも、このシャンプーは使い心地良いからまたかいたいなぁ、なんて未練が残っていたようです。

■次はオーサワ
ある日調味料をとりだそうと思い、戸棚を開きました。すると見慣れないパッケージが幾つか目につきました。有機黒豆』『地粉』などなど・・・。裏を返すとオーサワジャパ〜ン!のような文字が書いてありました。所謂マクロビ食材です。
帰ってきた妻に尋ねると、友達ママに連れられマクロビショップを紹介されたとのこと。値段はだいぶ高かったけれど、それなりに食えるものだし、マクロビさんとはいえ付き合いも大切だからこの程度なら良いかな?なんて思っていました。
そんなある日、妻が料理しているところを覗くと、なにやら茶色いものを鍋に投入しているじゃないですか。袋には甜菜糖の文字があります。なんで砂糖を使わないのかと聞くと、なんかごにょごにょいってました。ちょっとふて腐れていたのでその場は放置し張り込み(?)調査を決行したところ、上白糖をまったく使わないことが判明しました。黒糖もそうなのですが、ショ糖以外の成分を比較的多く含んだ甘味料は料理を選ぶんですよね。妻はいつの間にか影響を受けていたみたいです。

■料理教室
甜菜糖でがっくり来ていた私ですが、水面下ではとある計画が進行しておりました。
カレンダーに『料理』という文字を見つけ、これは何?と、聞いたところ友達と一緒に通い始めたのだそうです。実はすでに何回か行っているとのこと。まさか・・・と、思い詳細を訪ねると、マクロビショップが開催しているマクロビ料理教室でした。保護者同士の付き合いがあるので断り切れなくなったと云うことです。そうなるとそれ以上強くはいえませんから、折角なので情報収集して詳細を教えてね、と反発を持たれないよう譲歩をしておきました。因みに、現在は通っておりません。なんでも、ひじきの煮物をつくるにあたり、洗わず、水に戻すこともしない、アクも抜かないで煮込む調理法をみて、呆れかえってしまったそうです。其処までして守る一物全体っていったい・・・というキモチになったみたいですね。

■最近のこと
下の息子は皮膚が弱く、年中感染をおこしているのですが、それを見たママ友の一人が里芋パスターを勧めてきました。妻は圧力に負けて、息子は里芋ペーストを巻かれて帰宅しました。「園からのお話しなら拒否もできるけど、ママ友だと拒否しきれない、このままだと園に通わせられない」と、妻は思い詰めておりました。私はついつい声を荒げてしまいちょっとした喧嘩に・・・
結局、うちの息子は里芋でかぶれるから・・・という消極的理由でお断りをする事になりました。
なんでこんなくだらないことで悩まなきゃならないのでしょうね。

■ここまでを振り返って
改めて振り返ると、我が家にも代替療法的なものが侵入しかけているのだなぁ、ううむ。という感想をもちました。
中でも、ママ友からの圧力が大きいみたいです。保育園での生活は園と職員だけで成り立っているものではなく、役員であるとか、保護者などの果たす役割も大きいわけです。そして、親同士の情報交換も重要だから、仲良くしていないと色々不都合があるのですね。なので、善意は無下に断れないわけです。基本的には親同士は双方遠慮があるのですが、自分の観察範囲では代替療法を積極的に実施しているヒトほど、他の保護者への干渉が大きい傾向にあるみたいです。(勝手な感想ですが、戦後急速に勢力を広げた宗教団体の信徒集団の行動がダブるような気がします)
妻が受け入れそうになったのは、息子が保育園で過ごしにくくなったり不利益を被るのを心配しての行動でした。あのウチは親がちゃんとしていないから、子どもがあんな風なの・・・みたいな事をいわれたくないというキモチもあったようです。根底には、『子どもがなんらかの問題を抱えているのは、親にその理由がある』という考え方が横たわっている気がするんだよね。あと、因果応報的な思想も見え隠れする。ばかじゃん・・・

■我が家の事例から見えてくること
散々代替療法などに引っ掛かりそうになった妻を引き留めるワタシ・・・という構図になっておりますが、実のところ妻が居なかったら代替療法に嵌る以前に絶望して夜逃げしていた可能性だってあります。おっちょこちょいで、信じやすくて、明るくて、まったく後腐れの無い性格の妻がいるので、自分は落ち着いて考えることが出来るのだと思います。
最初の見立てや療育法などは妻が動いて見つけてきたモノです。この時私は色々と調べて比較検討をし、実際に子どもにも関わり妻には止めようと説得しました。これが、調べもしないで妻に任せきりの状態でいきなり否定的な話を持っていったらどうなっていたでしょう?もしかしたら止めたかも知れませんが、説得できる確率は下がりそうですよね。只単に論理的なだけじゃヒトは動かない場合が多いどころか、頑なになってしまう事もあるでしょうね。
先日妻も話しておりましたが、辛いことがあっても愚痴を謂えなかったら、その思いは誰が受け止めてくれるのか、です。その受け皿を代替療法が担う可能性が高いとおもうのですよね。医療の現場でも、病院などでは診療時間が身近く親身になって話を聞いてくれない気がする・・・だから、話を受け止めてくれる○○療法に傾倒するというようなものと同じですね。
我が家では引き留める事に成功しておりますが、それは妻がちゃんと話してくれているからなのですね。マクロビ料理教室の件では妻は既に通い始めておりましたのですが、実はその頃って論文関係でイライラしていたりして、妻とのコミュニケーションがしっかりできていなかった時期なのです。反省ですね。
妻一人だけに任せきりだったり、夫婦間の情報共有が出来ていなければ侵入を防ぐことは出来なかったと思います。ただ単に知識があるだけでもダメだったと思います。



次回後編では、なるべく多くの方が妥当性の乏しい代替療法を利用せずに済むには?を考えてみます。