汁気は二段階

肉を過熱しすぎてしまうとパサパサになる。これは誰しも体験したことが在ると思う。
食肉を構成するたんぱく質は固有の温度を超えてしまうと、離水といって水分が分離してしまうのだ。(食肉を構成するアクチンとミオシンは60〜70℃でゲル化し、その温度を超えるとゲルが破壊され離水する事が一因)
ふ〜ん、じゃあ、お肉は何でも70度くらいまでの加熱にすれば良いのじゃないの?
なんて、考えてしまいそうですが、美味しさはそれだけで決まるワケじゃ無いんですよね。
牛肉の煮込み料理を考えてみると、沸騰状態で何時間も煮込んでいるじゃない。でも、柔らかくておいしいデショ。煮込み料理の場合、結合組織の多いお肉を使います。このお肉をレアで焼いたらゴリゴリで食えたモンじゃないです。結合組織はレア程度の加熱をしたら、がちがちに収縮しちゃうんですよね。
このお肉を煮込んだ場合、結合組織のコラーゲンがゼラチン化するんですね。そしてトロリとしたテクスチャーと、肉の潤びる食感が堪らなく旨くなるんです。
実は、ジューシーさにも2種類あって、お肉自体に水分があれば噛みしめたときに『じゅわ!』と、しみ出てくるんですね。で、もう一つあって、それは自分自身が分泌する汁なんですね。芳醇な香りと凝縮する旨みによって引き出される唾液ですね。
パックして温度調理すれば、確かに肉のジューシーさはあるけれど、2番目のジューシーさは弱くなってしまう。だから調理人は工夫して、焼き目を付けたり、濃厚なソースをかけたりするんですよね。ステーキだったらフランベがそれにあたるのかな?
料理って本当に素晴らしいですね。